まずは、拍手のお礼を。皆様、ありがとうございますm(__)m
ところで、突発的妄想。
馬鹿やってます。旦那が(笑)
いいえ・・・馬鹿なことやってる張本人はワタクシなんですけど・・・
以下、馬鹿っぽいというか完全に馬鹿。
伯爵話を書きながら浮かんだネタに、我が家のBOSSの暴言が更に馬鹿妄想を加速させた、変な妄想話です。
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三枚のペチコート作戦
女主人の絹糸のような長い髪の一部と前髪を一緒に緩やかに結わえ上げた女吸血鬼は、その持ち上げた部分をピンやバレッタで、ふくらみが潰れないように器用に留めた。
いつもはトゥラザースとジャケットに飾り気の無いシャツ姿で、それを飾るのはリボンタイと十字架のタイ留めというわずかばかりの装飾しかない女局長。
だが今日は、肌の色を引き立てる淡いピンクがかったやさしいオフホワイトの色合いの、サテンで出来た華やかな膝丈のフレアスカートを履いていた。
ジャケットも立ち襟だが、スカートと同じ素材の胸元が大きく開いたジャケットで、七分の袖は先がフレア状に優雅なラインを描き出している。
そして、深く切り込んだ襟元には、その艶やかな蜂蜜色した谷間に6カラットのブルーダイヤを中心に据えたネックレスが上品に輝いていた。
髪の立ち上がりとふくらみをチェックしたドラキュリーナは満足げに、女上司の整った顔を見ると、同じブルーダイヤのドロップタイプのイヤリングをつけて、手首にも多少控え目な同じブルーダイヤのテニスブレスレットをはめた。
「インテグラさま、こんな感じでどうでしょう?」
どうでしょう?とは、聴いてはみたが、いつもの気安さの中にもラグジュアリー感を湛えるその姿に、セラス自身がいたく満足していた。
目の前の女上司は、元々貴族的な品格の顔立ちをしているのだ。
インテグラが、眼鏡をフレームが目立たない小さめなものに変えて鏡を覗き込む。
すると、これほど気高さを醸した魅惑の肌を持つ女性は他には居まい!と思える、たおやかで強い芯を持ったイングランド婦人がそこに出来上がったのだった。
――完璧(インテグラル)!!さすが、私のご主人様だわっ!!
実はこの目の前の女は、自分のマスターのマスターという位置づけなのだが、もうそんな二段階マスター論は吹っ飛んで、目の前のヘルシング当主を『私のご主人様』と思い込んでいる女吸血鬼は、ギュギュ〜〜っと拳を握り締め、その姿を言祝いだ。
「まぁ、いいんじゃないのかな〜?あまりお堅い格好じゃダメらしいし。」
しかし当の本人は、そんな稀に見る高潔でたおやかな女性らしい自分の外見には全く興味がないらしい。
「う〜〜ん、、、、でも、こんな髪型でいいのか、セラス?これって本当は襟足もあげて、後頭部でまとめるのが正式なんだろ?」
「いいんですよ、インテグラさま。それじゃ正式過ぎます。パーティーと言っても、そう言う席じゃないって、ウォルターさんが言ってましたし。あんまりカチッと結い上げるとかえって浮きますって。」
そう言ってレッドカーペットの上で微笑むカメラ目線の女優が載っている雑誌を見せて、その髪型を指差した。
「目指したのは、こんな感じで、緩やかに持ち上げたキメすぎないふんわりしたヘアスタイルなんです。だから、これでいいんです!」
そう言われた女当主は「ふ〜〜ん。」と気の無い返事をして立ち上がったのだ。
――襟足もあげて、後頭部でまとめるなんて、そんな髪型、私じゃ無理ですって!!それは所謂(いわゆる)苦行です!
吸血鬼を耽溺させるような鼓動と芳香を持つ女の、白鳥のように気高い首筋を晒したら・・・
それを考えただけで、女吸血鬼はゴクリと生唾を飲む。
血を吸う夜族を魅了して狂わせるだろう、潔癖なのに妖しい色香を持った首筋なんぞ目の前にしたら、きっと理性を失って牙を剥いてハァハァしちゃいそうだ・・・・とセラスは、嘆息する。
いや、きっとそれ以前に、この女主人の飼う犬が辛抱し切れずに襲い掛かって押し倒し、その魅惑的な首筋に涎をたらしながら鼻っ面を擦りつけるに違いないのだ。
実はその『犬』が自分の畏怖すべき主人でもある女吸血鬼は、ハァと溜息をついて、天上を仰いだのだった。
割と砕けた席に出なければならなくなった主人のために、屋敷のメイドたちはそのカジュアル感があるのに品があるヘルシング家の当主が着るに相応しい洋服を用意はしたが、いざ髪型となったとき、皆一斉に頭を抱えることになった。
ヘルシング家の当主だったら自宅に美容師を呼べば済む話なのだが、この女はそんなものに貴重な時間を割かれるのが嫌なのだった。
美容師を呼んで彼女の部屋のパウダールームでヘアメイクをしてもらうなど、そんな気持ちは毛頭無い勇猛果敢な剛毅な女は、気が向いた時、あるいは空いた僅かの時間にメイドを呼び出して、「適当に結ってくれ」と言うだけなのだ。
ソワレや格式の高い屋敷から呼ばれたお茶会に合うヘアスタイルを結い上げる技量を持ち合わせたメイド頭だったが、如何せん若い者が多く集まる砕けた場に似合う、「品のある今風の髪型」とは、どうすればいいのか頭を悩ませた。
では、この屋敷に居る最年少の女性に意見を聴いてみましょう――と、忠実な執事から、白羽の矢を立てられたのが女吸血鬼だったのだ。
立ち上がった女当主は、歩きにくいなコレ――と、文句を言いつつも、やはり貴族のご令嬢らしく、銀色を含んだその美しい10センチヒールのバックバンドのサテンの靴を見事に履きこなしていた。
撫でたい誘惑に駆られる艶やかな輝きを放つ素足は、夕暮れの光に黄金色に輝き、引き締まった足首と優雅なラインを描く鍛えられたふくらはぎは、芸術品のように美しかった。
やはり、やれば出来るのだ、この女性(ひと)は。
普段は鉄火と硝煙に囲まれた血飛沫が舞う戦場で、兵たちの道標のように堂々と果敢に勇ましく指揮を執るのだが、こう云う姿をさせればそれなりにちゃんとこなすのだ。
やっぱり貴族のお嬢様なのだわ〜〜と、セラスはその姿を目を細めて悦にいって眺めていた。
襟元にリンクスの腹の極上の毛をあしらった黒のカシミアのコートを袖を通さず肩に羽織り、さて大事な護身用の小型の銃が入ったクラッチバックはどこだっけ?と、インテグラが部屋を探し始めた時だった。
――起きたッ!!来る。間違いなく、ここに来る!!
セラスがその悦にいって笑っていた顔を強張らせ、クラッチバックを探すのを手伝い始める。
状況的にはどう考えても、早く会場に向かわせたかった。
どうしたって、いつもと違う姿をした主人を見たら、あの偉大な吸血鬼は、何かしらの揉め事を起こすのは必須。
だがしかし・・・
魅力的な蜂蜜色の素肌を引き立てる衣装と髪型がとても似合う、女らしい美しさの女主人を
「綺麗でしょ〜〜似合いますでしょ〜私がインテグラさまの着替えのお手伝いと、ヘアメイクをしたんですよぉーー、マスター」
と、自慢してみたいのも事実だった。
いや、そんな自慢をしたら最後、冷酷な顔で冷たく蔑む視線で見つめられた後、逆らえないのに絶対にやりたくない地下の害虫駆除を「命令だ」と言ってやらされるに決まってる。
そんな使い魔はいらないといっているのに、あの主人は「お前に必要だと思って集めたんだ。飼いならしてみろ」と地下に気味の悪い、害虫としか呼びようが無いものを溜め込んでしまっていたのだ。
あの偉大な吸血鬼は、存外に嫉妬深い。
特に自分の大事な主に関しては。
そんな自慢をしたら墓穴を掘るだけ・・・・
そう考えたセラスは、急いで一緒に女主人のバックを探す。
そして、ソファの背もたれと座面のクッションの僅かな隙間に挟まっていた、艶やかなクロコダイルの見事な斑が浮き出たクラッチバックを見つけると、それを急いで女主人に渡した。
クラッチバックを受け取った女は、それに銃と補充用の弾丸が入っているのを確かめ、「では行って来る。留守を頼むぞ。」とセラスに声をかけた時だった。
話し終えるのと私室の扉から偉容を誇る緋色の吸血鬼が抜け出てくるのが、ほぼ同時となったのだ。
―― 遅かったーーーーーーッ!!
『何が「遅かった」というのだ、この半人前の吸血鬼が』
空気も響かせていないのに、圧倒するような質量を伴って、婦警の頭の中で陰々と男の低い声が響く。
あからさまに自分の配下の吸血鬼に脅しをかけるような圧力で脳内に声を響かせ、サングラスを外して発光するような強い赤の視線で下僕の女を睨んだ男に、セラスは「ひぃっ!!」と短い悲鳴を上げて跳び退いた。
「いきなりノックもなく無礼に私の部屋に侵入した挙句、配下の吸血鬼を脅すとは何事だ、この馬鹿犬がッ!!」
装いを変えても相変わらず剛毅な指揮者は、不躾な下僕を見上げ、恐れもなくその巨躯の男を叱咤した。
しかしこの吸血鬼は、その主の小言や叱咤が聴きたくて、「人間の常識に化け物を当てはめるなんぞ馬鹿げている」と言いつつも、いつも無礼で不躾な様子で主人にソワレの挨拶にやってくることを、セラスは知っていた。
ご主人様の小言や叱咤、時には鉄拳が欲しいなんて――マスター歪んでますよ・・・と、その先を分析しそうになったセラスだったが、うっかりそれが漏れたら大変だと、新米婦警は平常心を装った。
「今晩は、インテグラ。今宵はいい紫の刻になりそうな匂いがする。」
主の小言をことごとく軽く無視した男は、夜族しか作りえない美しい人外の笑みを浮かべて、そうインテグラに挨拶をした。
そして自分を斬りつけるような、鋭い青の目線で睨んでいる女の姿を、珍しいものでも見るようにまじまじと見つめたのだった。
「珍しい姿だな、インテグラ。我が主は、これから何処かへご出陣か?」
男が皮肉たっぷりに口の端にシワを寄せ、そうインテグラに問う。
セラスは、『あぁ・・・何でそうインテグラさまに絡むんだろ〜〜マスターは』と、思いつつも、われ関せずと、数歩下がって影のように大人しくすることに徹するのだった。
「こんな動きにくい服を着せられてるのに、どこかに出陣するように見えるのか、この耄碌吸血鬼。私はこれから不本意ながらもパーティーに出なくちゃいかんのだ。戦になんぞ、こんな姿で行くものか、馬鹿が。」
実際、出陣の方がどれだけましかと、女は眉根を寄せる。
動きにくい服を着せられ、窮屈な靴を履き、飾り立てられて不愉快極まりない上に、行きたくないパーティーに当主の面目を保つためどうしても出席しなくてはならない状況にイライラしていた女は、眉間にシワを作って従僕を不機嫌に睨みあげた。
「飾り立てて夜会に出陣となれば、婿の相手を探して男を狩りに行く訳か。馬子にも衣装とは言うが、そこまでして普段の姿を覆い隠して男を漁らんと相手が見つからんとは、嘆かわしい限りだな、ヘルシング卿。アーサーがあの世で泣いているぞ、きっと。」
いにしえ人(びと)の感覚をもった歳経た吸血鬼からすれば、そんなに短いスカートで夜会に出て、男どもに素足を晒すとは何事だ!?としか思えなかった。
胸元が深く切り込んだ衣装を着て、芸術品のようなふくらはぎを晒し、艶やかな蜂蜜色の肌を大勢の男の目に見せ付けるような主の行為は、ドラクルの名を秘めた化け物が持つ逆鱗を多少刺激するものだったらしい。
もともとこの化け物は女主人への占有意識と執着心が強いのだ。
それを刺激された不快さを、化け物は捩れた(ねじれた)表現でしか表せない。
しかし女にとって、それは、喧嘩を売られたようにしか思えない言動。
この女には、男心の機微を察する能力は全くなかったし、そもそもその分野は超絶的に鈍感で初心なのだ。
そして、売られた喧嘩は絶対に買う女なのだ、この指揮者は。
「主を馬鹿にするのも大概にしろよ、このボケ吸血鬼。私は当主の面目を保つ努力をしただけだ。誰が婿の来てがないだと?誰が男漁りに行くだと?!愚弄もいい加減にしろよ、馬鹿野郎ッ!私にだって縁談くらいはあるんだ!!自分がいつも血と女に飢えてるからって、主人まで同列に扱ってもらっては困るぞ、我が従僕。」
女はブルーの目を細くして口に不敵な笑いを浮かべ、見下したように鼻を鳴らしと、その鋭い武器のようなヒールの踵で、一瞬の隙を突いて男の足の甲を踏む。
「痛いぞ、お嬢さん。男に乱暴を働くとは、縁談があっても破談は間違いないな。」
男はさすがに甲に食い込んだヒールに片眉を上げて抗議する。
しかし、口の端には皮肉気に笑ったシワが刻まれていたが・・・
「痛さなんか慣れっこで、逆に気持ちがいいくらいだろう?私もお前以外にこんなことはせん!そして、今までの縁談だって破談になってる訳じゃないんだぞ!あれは私が辞退するか断ってるんだ、馬鹿にするな吸血鬼。」
「断っていると?」
「そう、断っているんだ。」
「何故?」
「・・・・・・・・まあ、色々と理由があるがな。――結局、気が向かんだけだとも言える。」
まさか婿になる人間に、『実は私、地下に吸血鬼を飼ってるんです。いえ、ちょっと凶暴な犬がいる程度に思ってくれればいいですから』と、言うわけにもいかない。
この化け物の飼い主であることが、自分が一番縁遠い理由だとは、負けを認めるようでやはり言いたくなかったのだ。
その上、『家』と『機関』を継ぐために子孫を残すことだけが役割と化している現状にも、多少不満と疑問があったのは確かだ。しかし、そんな女の繊細な内実をこの男に教えてやるのは業腹なのだった。
そんな僅かな躊躇を、一瞬だが瞳の中に浮かべた女を、男はどう思ったのだろう・・・
「ふむ。我が主は、気が向かんのか。」
そう言うと肩をすくめて、『全くこのお転婆は・・・』と言うような皮肉な視線を向けると、踏んでいる女の足をよけて主のためにドアの前から身を避けたのだった。
――あぁ、そうだ、こんな言い争いをしている場合じゃない!早く行かなきゃ!!
そう思った女は、男を一瞬だけキッと斬るような鋭い視線で睨むと、ドアノブに手をかける。すると・・・
「インテグラ、その髪型は夜会には向かんのではないか?残りの髪も、キチンと結い上げるものではないのか?」
微妙に訝しげな目線を女主人の頭に送っていた男は、長い歴史が培った吸血鬼の女を見る審美眼を発揮してそう忠告する。
自分の女を見せびらかすのは勿体無いが、かと言って変な姿で男どもの目の前に出すのも癪にさわる。
しかし、そんな複雑な化け物の内心は、外見からは全く窺い知れなかった。
そして、その言葉を聴いた女主人は、一瞬困ったような微妙な表情で従僕を見てから、その視線をセラスに注ぐ。
従僕の男も、その主の眼差しの先を追って、自分の下僕の女吸血鬼を見る。
青と赤の視線で見つめられたセラスは、まるでそこにいなかったことになっていた彫像のような姿から突然身動きして、慌ててあわあわとしゃべりだす。
「いいんですよ、マスター。今日のインテグラが出席なさるパーティーは、若い方が主流の流行を取り入れた砕けた集まりなんです。これは前だけにボリュームを持たせて立ち上げた『ポンパドール』って言うヘアスタイルの一種なんです。正式には全部結い上げるそうですが、今はこれでいいんですよ。」
その従僕の説明を聴いた男は、顔を冷酷なものにして、自分の女主人に向きかえった。
「だ、そうだ。今時の若い娘が言うのだから、これでいいんだろう。・・・何か異議でも、アーカード?」
そう説明した先にある男の顔は、表情(かお)から感情を消し去った冷酷なもの。
この男が、面(おもて)を無表情なのに冷酷なものに変えたときは、何かしら腹に一物あるはずだと、女は小首を傾げてアーカードに問う。
確かに、この男にはそれなりの審美眼があるのだ。意見を聴いても損にはなるまい――そう女は判断したらかった。
「『ポンパドゥール侯爵夫人』の名を持つヘアスタイルとは、それはお前が誰かの公妾であるという証なのか?」
あまりにも歳の差がありすぎる男の珍妙な問いに、インテグラはさらに首を傾げて頭を捻る。
ポンパドゥール侯爵夫人?公妾?えっ、それって公け(おおやけ)の妾かってことか?
首を傾げたまま、下から掬い上げるように見上げるだけの女に業を煮やした男は、さらに言葉まで凍てつく冷たさに変えて、女を詰問した。
「あの女は、ルイ15世の愛妾ではあったが、男との床で寝乱れたそのような髪形は、少なくともしていなかった。妾ではあったが、公妾という地位に見合った、才気と教養と度胸と外交戦術を持った稀有な女だった。
確かにお前にも才気と教養と度胸と外交戦術があるが、それを持った私の主であるお前を公妾としている男は、いったい何処の誰だ?
あの女の名を持つ髪形をしているという事は、国王か国王に準じる人間の妾ということなのか?」
「・・・・・・・・・・あのな、アーカード。お前の発想って時代がズレ過ぎてて、私にもわかりずらいんだが。」
審美眼はあっても、女の服飾やヘアメイクには全く関心が無い男に、女主は頭を抱える。
「あのな、『ポンパドール』はヘアスタイルの一般呼称なんだ、アーカード。あの敏腕でベッドの上でフランス政治を牛耳っていた女傑とイコールじゃないんだ。こんな髪型をしている女は、ハリウッドにもこのロンドンにも大勢居る。それはただのファッションなんだ。決して国家権力を持つ男の妾を表すヘアスタイルじゃないんだ、わかったか、我が従僕?」
女はガクッと肩を落としつつも、そう丁寧に従僕に説明をしてやる。
元々、知らぬもの、教えを請うものには、それを卑しめ笑うことなく説明してやる資質を持った指揮官なのだ。
女だてらに、と余計なことで怨まれないための知恵と、特務機関の長として人を率いるための力量は持っているのだ。
「ただのファッションなのか?エリゼ宮を作らせたあの女の地位とイコールではないと?」
「そうだ。だから私は『私の時代が来た』と言って、アバニコで口元を隠しながら鮮やかに笑うことは断じて無い。」
「その前髪と頭頂部だけを大きく結ぶのが今風だと?それをポンパドゥール侯爵夫人と?」
「いや、だから侯爵夫人はいらないんだ。それに『パンパドール』だ。この前髪と頭頂部だけ膨らませるのが、今は流行ってるんだそうだ。だから、これでOKなんだ。わかったか、従僕?」
「認識した、我が主。」
では、縁談を『気が向かん』と言って断っているのは、誰かの『妾』になっているためではないのだな――と、主と全く次元がかけ離れた世界に住む吸血鬼は思う。
そして、無表情なまま赤い目を煌々とさせてうなずいた男を見ながら女は考える。
この男は、何やら悪さをしに、昔、大陸の西の端までやってきたことがあるのだろう。
きっとプロイセンでも引っかき回して、周りの国々に戦乱の火種を撒き散らそうとしたのかも知れぬ。
その時に逢っているに違いない。
元々才気ある美貌を誇る女には目が無い男だ。・・・きっと逢っているだろう。
「お前、実はあの女に会ったことがある?」
すると男は両口の端をニィっと吊り上げ、牙を剥いて笑った。
「さあな、どうとでも。しかしあの妾は教養と才気と外交術を持ち合わせた、芸術に大層造詣が深い女だったらしい。特筆すべきはその外交手腕だろう。そして、あの時代は珍しく外交戦術に長けた女が三人揃ったからな。」
「三枚のペチコート作戦?」
「そうだ。そんな名前だったな。」
男は口の端をさらに吊り上げ乱杭歯を覗かせて、皮肉そのものの吸血鬼の笑いを浮かべた。
きっとどうせ炊きつけようとしたプロイセンが砲火を他国に浴びせる前に、ポンパドゥール夫人と女帝エリザヴェータと女帝マリア・テレジアから、反プロイセン包囲網を構築されて、こいつは愉しみにしていた戦火を断念せざるを得なかったのだろう。
この戦争狂な血を吸う悪鬼めッ!!
――ふんっ!こんな女誑しの化け物なんぞ、女傑たちから踏みつけられて、熨(の)されてしまえばいいんだ!!
女主人は、嫌な笑いを浮かべた吸血鬼の顔を冷たく一瞥すると、「では言ってくる」と言って、私室から出ようとした。
「だが同じ才気と教養と度胸と外交戦術があっても、お前の方があの公妾よりは格段に優秀だな。あの女は、30歳にして絶倫のルイ15世の相手が出来ずにベッドを去るが、我が主であれば、化け物の私と、生涯、床を共に出来るほどの有り余るたいりょ・・・――――」
一体何を言い出すのかと、眦を吊り上げた女は、素早くクラッチバックから銃を抜き出すと、鍛えられた手際のよさで、その弾を下品な吸血鬼の口元めがけて全弾発射する。
そして、吸血鬼の口を乱暴な方法で塞ぐと、何事もなかったように身を翻した。
背中越しに、「後は頼んだぞ、セラス」と言うと、インテグラはその素晴らしい脚線美を見せ付けるように足早に出かけていくのだった。
後を頼まれた女吸血鬼は、丁寧に礼をとって女主人を見送る。
そして顔を復元しているマスターを見ながら、『これって、並外れた痴話喧嘩って言うんじゃないんですかねぇ?!』と、眉を寄せて考えるのだった。
――――――――――――――――――――――
あの女傑たちの「三枚のペチコート作戦」にギャフンと言わせられたのが、旦那だったら愉しかろう〜とそんな妄想。
だったら伯爵妄想で真面目に書けばいいんでしょうが、あんなスゴイ女性たちを三人も同時描写はワタクシには不可能です。
ポンパドールのヘアスタイルは、マヂにBOSSがブチかました実話です。
TVニュースのお天気お姉さんを見て、「何だありゃ、男と床でいちゃついて寝乱れたまんまの髪形か?」とカマシやがりました。
いや、それは〜〜・・・と、ワタクシが説明したところ、
「ポンパドール!?ルイ十五世の妾か!じゃあ、これは、『ワタシ、そんな私生活なんです』って訳か?」
みたいな・・・orz
こんなまともじゃない会話が、脳内変換妄想になると、こうなります。
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